コロナ禍での子どもたちの口腔環境は?

2021.2.19
  • 小学校教諭
コロナ禍での休校以降、子どもたちの虫歯が増えたように感じます。学校としてできることはありますか?
  • 佐々木貴浩
詳細なデータはまだありませんが、歯肉炎の悪化や虫歯の重症化などの例がみられます。2020年度は学校検診が例年より大きく後ろ倒しになり、これまで学校検診で発見し、通院を促していたような事例の発見が遅れ、重症化していることが考えられます。

このことからも、歯科衛生指導は学校での取り組みが重要です。実際に、コロナ禍にあっても学校での歯科衛生指導をなんとか工夫しながら進めている学校もあります。一方で、通常の歯科衛生指導ができないのも実情です。例えば、虫歯の原因となる歯垢に着色する「染め出し剤」を活用した歯科衛生指導は、効果は大きいですが、実施が難しくなっています。代わりに、綿棒タイプの「染め出し剤」*1と利用方法を掲載した「保健だより」を子どもたち一人ひとりに配布して、各家庭で活用してもらえるように発信した例などがあります。

この例のように、各家庭に歯科衛生への関心を持ってもらい、積極的に取り組んでもらうためのメッセージを発信することが大事です。子どもたちには、歯みがきやブクブクうがい(フッ化物洗口*2)に取り組む意義を次のように伝えてみましょう。「歯みがきやブクブクうがいは、単なる虫歯予防ではなくて、「健康づくりの貯金」だよ。自分の未来の健康を作り出しているという意識で取り組んでみよう」。

同時に、子どもの健康格差を拡大させないためには、個別のアプローチが不可欠です。なかなか歯科検診に行かない子どもがいたら、家庭訪問や面談をはじめ、家庭とコミュニケーションをとるタイミングで折りに触れ、歯科医の受診を勧めてみてください。

*1 購入には、文部科学省の「新型コロナウイルスに伴う学校再開等支援」事業の活用などが考えられます。日本学校歯科医会からの要望に対して、当該物品購入への補助が可能であると回答が出されています[PDF]

*2 少量のフッ化物の水溶液(主にフッ化ナトリウム溶液)を口に含み、30~60秒間ブクブクうがいをする方法。虫歯予防効果が髙いとされている。
監修者プロフィール

佐々木貴浩 (ささき・たかひろ)

ホワイト歯科・矯正歯科(岐阜県)院長、歯科医師、博士(歯学)。学位論文「学童における歯列・咬合状態の追跡研究」、現在、日本学校歯科医会常務理事、平成29年から日本学校保健会会報「学校保健」編集委員。以前は岐阜県歯科医師会理事として学校表彰事業、フッ化物洗口や全国歯みがき大会の普及などに関わり、現在は、日本全国への学校歯科保健に関する広報活動を行う。学校歯科健康診断におけるICT応用の普及をめざしている。

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